辱知猫儀久々病氣の処、 辱知犬儀久々病氣の処、
療養不相叶、昨夜いつの間にか 療養不相叶、過日三月五日
裏の物置のヘッツイの上にて逝去致候。 リヴィングルウムにて逝去致候。
埋葬の儀は車屋をたのみ蜜柑箱へ入れて 埋葬の儀は福島県から前飼主
裏の庭先にて執行仕候。 高野一家来たりて執行仕候。
但主人「三四郎」執筆中 但主人ちぐさ圓盤映像編集中
につき御會葬には及び不申候。 につき御會葬には及び不申候。
九月十四日 以上 四月二十五日 以上
それにしても「辱知猫」の書き出しがいい。そもそも「その人と知り合いであることをへりくだっていう語」なので、漱石は、猫と知り合いであったことを光栄に思っていて、へりくだって「私が光栄にも知り合いであった猫」という意味になるという。知らなかった。「辱知(じょくち)=(知を辱(かたじけな)くする意)その人と知合いであることの謙譲語。辱交。『先生とは─の間柄です』(『広辞苑』第6版)」